耐高温腐食封孔材料「MOFコートA」
1.緒言
あらゆる産業には、塩酸・硫酸・硝酸・ギ酸・リン酸などの過酷な腐食環境が存在する。これまで腐食環境においては、素材表面へ溶射を施すことで耐食性を付与してきた。また溶射の欠点である気孔は施工方法上、必ず発生するものであり、それを補う材料として封孔材塗布を複合してきた。しかし封孔材は樹脂系が主成分であり、各腐食環境において性能を発揮してきたが、腐食+高温環境下では耐久性が劣る。そこで腐食+高温環境下で耐久性のある封孔材を開発したため、各種試験結果に基づきMOFコートAを紹介する。
2.フェノール系樹脂の一般的な特性
MOFコートAはフェノール系樹脂をベースとした開発材である。まずフェノール系樹脂の一般的な特性を以下表に示す。
当社ではフェノール系樹脂を、従来の溶射+封孔処理に加え、独自の特殊処理を施すことで、腐食+高温環境下での効果を発揮する材料である。
【フェノール系樹脂 特性】
| 製品名 | MOFコートA | |
| 主成分 | フェノール系樹脂 | |
| 腐食環境 | 塩酸 | 濃度10%、120℃まで適用可 |
| 硫酸 | 濃度50%、150℃まで適用可 | |
| 上水・海水 | 150℃まで適用可 | |
3.ラボ試験
3-1: 特殊処理の条件出し – 塩酸溶液による腐食試験
MOFコートAを塗布後に特殊処理を施すが、特殊処理条件の選定を目的に、塩酸溶液における腐食試験を実施した結果、As-Sprayは16時間浸漬で溶射皮膜は剥離を生じた。一方、MOFコートAは特殊処理を行えば、72時間浸漬試験で剥離がなく優れた耐食性を示した。
【試験概要】
- 溶射仕様
- プラズマ溶射
- 溶射材料
- ハステロイC276
- 封孔材
- フェノール系樹脂
- 特殊処理
- 条件A・B・C
- 試験環境
- 10%HCl×80℃
【試験結果】
| 試験内容 | 腐食速度(g/㎡・hr) および打音検査(剥離有無) | ||
| 試験時間 | 16〜40時間 | 40〜72時間 | |
| As-Spray | 3.2g/㎡・hr 剥離あり | − | |
| MOFコートA | 特殊処理A | 剥離なし | 12.5g/㎡・hr 剥離あり |
| 特殊処理B | 剥離なし | 10.5g/㎡・hr 剥離なし | |
| 特殊処理C | 剥離なし | 8.8g/㎡・hr 剥離なし | |
3-2:MOFコートA – 硫酸溶液による腐食試験
3-1試験よりフェノール樹脂系を塗布後の特殊処理はC条件が最も優れており、次に硫酸用液による腐食試験に展開した。
試験結果はいずれも試験時間48時間では剥離は認められないものの、腐食速度では1.5倍以上優位な結果が認められた。
【試験概要】
- 溶射仕様
- プラズマ溶射
- 溶射材料
- ハステロイC276
- 封孔材
- フェノール系樹脂
- 特殊処理
- 条件C
- 試験環境
- 80%H2SO4×140℃
【試験結果】
| 試験内容 | 腐食速度(g/㎡・hr) および打音検査(剥離有無) | ||
| 試験時間 | 24時間 | 48時間 | |
| As-Spray | 5.2g/㎡・hr 剥離なし | − | |
| MOFコートA | 特殊処理C | 3.2g/㎡・hr 剥離なし | 5.3g/㎡・hr 剥離なし |
3-3:MOFコートA – 硫酸環境における腐食速度の比較
As-SprayとMOFコートAを塗布した場合の腐食速度について比較検証を実施した。いずれも試験時間112時間では剥離が見られなかったが、MOFコートAでは腐食速度が10倍以上も優位である結果となった。
【試験概要】
- 溶射仕様
- プラズマ溶射
- 溶射材料
- ハステロイC276
- 封孔材
- フェノール系樹脂
- 特殊処理
- 条件C
- 試験環境
- 70%H2SO4×80℃
【試験結果】
| 試験内容 | 腐食速度(g/㎡・hr) および打音検査(剥離有無) | |||
| 試験時間 | 40時間 | 88時間 | 112時間 | |
| As-Spray | 2.47g/㎡・hr 剥離なし | 2.59g/㎡・hr 剥離なし | 1.79g/㎡・hr 剥離なし | |
| MOFコートA | 特殊処理C | 0.13g/㎡・hr 剥離なし | 0.12g/㎡・hr 剥離なし | 0.11g/㎡・hr 剥離なし |
4.実機試験
4-1:高温Clガス雰囲気(200~458℃)における実機試験
実機環境にてテストピースを投入いただき、高温下(200~458℃)における腐食実機試験を実施した。下記写真結果より、基材SUS316の露出部は一部腐食が発生していることが認められたが、MOFコートAを塗布した箇所については外観変色は若干認められたものの、本条件では腐食は進行していないものと判定した。
【試験概要】
- 溶射仕様
- プラズマ溶射
- 溶射材料
- ハステロイC276
- 封孔材
- フェノール系樹脂
- 特殊処理
- 条件C
- 塗布範囲
- 100mm(写真 試験片左より)
- 試験環境
- 99% Clガス×200〜458℃
※温度環境詳細は以下の通り
1.試験開始〜11日目:200℃ 2.12日目以降:380〜458℃
- 試験期間
- 239日目
【Clガス雰囲気における試験後の外観比較】
4-2:高温HClガス雰囲気(500℃)における実機試験
実機環境にてテストピースを投入いただき、高温下(500℃)における腐食実機試験を実施した。下記の写真結果より、封孔材従来品は、試験時間:122hrで完全に剥離したが、MOFコートAでは剥離は認められず良好な結果となった。また封孔材従来品の腐食速度=1.00g/㎡・hr、MOFコートAの腐食速度=0.47g/㎡・hrであり、約2倍の性能差が出る結果となった。仮に剥離した際の一例は以下に示す。
【HClガス雰囲気における試験後の外観比較】
【写真例 10%HCl×80℃×16時間試験後の剥離状況(As-Spray)】
5.まとめ
上記の3.ラボ試験 および 4.実機試験の結果より、フェノール系樹脂に特殊処理を施した開発材料であるMOFコートAは、高温下の塩酸・硫酸環境において、従来の封孔材よりも高い耐久性能があることを示された。このことから鉄鋼では塩酸設備・硫酸設備(モレタナ設備)など、電力では煙道・煙突・エコノマイザー・脱硫装置など、また化学プラント設備では蒸留塔・各種設備(塩素・酢酸・ギ酸・リン酸)でも適用できると考えられ、従来よりも高い延命化を期待できる。

